オルガン日記5 合唱とオルガンのアンサンブルを振り返る~翠声会Ⅱ組第10回演奏会~

2023年1月4日

信長貴富さんの新作、女声合唱とオルガンのための「詩篇」、本番までを振り返ってみました。

演奏会後にコロナに罹ってしまって、しばらくパソコンに向き合う気力が出ずにいたのですが、今さらながら記録を残そうと思います。

11/1。川口リリア音楽ホールで夜が初の合唱合わせという日に朝一でオルガンのストップを一つずつ確認していると…とても大切なストップが故障していることに気付きました。あるストップを引くと音が止まらない。初めて出会うパイプオルガンでこれは焦りました。


午後、客席からアドバイスをくださる予定だった石丸由佳先生がいらしてから、ビデオ通話でオルガン調律師の方と話しながらパイプの応急処置をしてくださり、何とか合わせをできる状態にしてくださいました。オルガニストは調律にも携わるのですね。


これには感謝感激でしたが、その日失った大切なレジストの数時間は大きかったです。のちに合唱団とホールとの交渉で、追加で二枠を合わせに使わせてくださることに。結果的には合唱との合わせが予定より増えて新作のリハーサルとしては有難い状況になりました。怪我の功名というのは正にこういうこと!

指揮の赤坂さんと合わせ中

ホールでの合わせの初日は翠声会のメンバーとの歌との合わせが沢山できると思っていたけれど、立ち会ってくださった作曲の信長さんとオルガンの石丸先生のアドバイスのもと、音作りの試行錯誤が6曲分。


結局、5時間のうちの多くはレジストレーションやバランス調整にかかりきりとなりました。指揮の赤坂さんや翠声会の皆さん、その後に別のステージのピアノ合わせでいらしていた澤瀉さんや作曲の竹内君たちもお待たせすることになって、皆さんをとっても疲れさせてしまったのではないかと思います。


そんな中、皆さん辛抱強く待ってくださったので、その日に納得のいくような音作りができて、後の2回のホール合わせで合わせを多くできる準備が整いました。リリアのオルガンはとても柔らかい豊かな心地よい響きがあり、声ともよくマッチします。

客席にはアシスタントしてくれた小原木さん


客席からアドバイスくださったり、オルガンのレジスト記憶装置のメモリ入力を手伝ってくださった石丸先生には感謝しかありません。現場でのスピード感を目の当たりにした気がします。
思いの外、合唱がオルガンにかき消されることなくホールによく届くということで、妄想で作っていたオルガンのレジストレーションよりもかなりダイナミックな音遣いとなりました。


合唱には言葉があるのと、オルガンとの周波数との違いもあり、オルガンの音と喧嘩をしないという発見がありました。

また、合唱も全力で歌わなくてもオルガンを超えていく響きと言葉の彫刻で、全体のディナミックスの幅を作ることができるとも感じました。

テンポ変化やrubatoの多い合唱作品なので、指揮者との距離もあり難しく感じることが多かったのですが、合わせをするにつれて少しずつ馴染んできて、合唱団の皆さんのブレス音や子音の準備を感じることができるようになってくると、指揮が見られない状況でもアンサンブルしやすくなってきました。


川口リリアのオルガンに設置されている鏡は左上にあって動かせないため、楽譜の右側を見ている時や足ペダルが忙しいときにrubatoが来るときが一番の緊張ポイントです。


加えて、指揮者の顔がバルコニーの手すりと重なっていて、実は赤坂さんの顔だけが見えないという状況笑 赤坂さんの手と体の動きに集中しました。

音色作りをする中で、使うパイプを増やしていくと鍵盤が重くなっていくのですが、必ずしも大きな音とは限りません。たくさん重ねて柔らかい響きであっても鍵盤は重かったり、すごく大きな音なのにパイプを数本しか使ってないのでタッチが軽かったり、その感覚に慣れるのに時間がかかりました。

この演奏でアシスタントとして助けてくれた小原木ひとみさんは短期間で曲を読み込み、予めメモリをセットしたストップを微妙なタイミングのリモコンで操作してくださって、とっても心強いサポーターでした。いや、彼女は共演者でした。

本番では初めて合唱団がマスクを外したときに、「こんなにも弾きやすくなるとか!」と感動しました。ステージからバルコニーへ息遣いが背中越しにバンバン伝わってくるし、言葉の準備もしっかり感じられました。もちろん皆さんの熱量も。この違いで、こんなにも弾きやすくなるものなのかと。詩人、志樹逸馬さん、そして作曲の信長貴富さんのスケール感のある世界を、翠声会Ⅱ組の鮮やかな歌声とともに響かせることができたのではないかと思います。個人的な反省はまた次に向けて。。。

オルガンは運転に似ているとつくづく(運転できないので知らないけれど!笑)

オルガンと合唱のアンサンブル、もっともっと色々挑戦していきます。